同人誌の著作権に関する判例について

こちらの判例が話題になっていますが、個人的にめちゃくちゃ関係のある内容だったので、個人的に理解したことをまとめておきます。

事件番号 令和2(ネ)10018

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=89748

 

※注意する点※

・二次創作同人誌著者 VS 無断転載サイトの裁判
・二次創作同人誌が原作の著作権を侵害するか否かの判例ではない(あくまで同人誌自体の著作権についての判例
判例はあくまで個別の事件に該当するもので、一般論としての結論にはならない

・私は法律の専門家ではないので、個人的に理解したことをまとめただけです。


◆前提

一審(東京地方裁判所)の判決を経た、知的財産高等裁判所の判決の文書。

・無断転載サイトにBL二次創作同人誌(成人向け)を転載された著者(原告)が、無断転載サイトの運営会社(被告)に損害賠償を請求。
・一審は、被告の敗訴。被告は原告に損害賠償を支払うべし、ただし原告の請求額よりは低い金額、という判決。
→被告は敗訴が不服、原告は請求額が低くなったのが不服だったので、お互いに控訴。

 

なお一審の判決はこちら。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=89638

 

◆主な争点

1.同人誌の著作権について

 ●被告(無断転載サイト)の主張
 ・問題の発端となった著作(同人誌)は、原作の著作権を侵害している。
 ・しかも法で規制されているわいせつ図画を含むものなので、そのような著作に法的保護は発生しない。

2.損害賠償額について

 ●原告(同人誌の著者)の主張
 ・無断転載サイトに掲載されたせいで、同人誌の売上が落ちた。サイトPV数に相当する損害賠償を請求する。(1000万円)
 ●被告(無断転載サイト)の主張
 ・もともとイベント中心に売っているものだから、無断転載されたからといってそんなに売上が変わるはずがない(損害額はせいぜい20万円くらいのはず)。

 

◆今回の知的財産高等裁判所の判断

●判決

・被告(無断転載サイト)は、やはり損害賠償を支払うべし。ただし支払い額は一審の判決通り(約220万円)とする。

1.同人誌の著作権について

・今回問題となっている二次創作同人誌の内容は、必ずしも全面的に原作の著作権侵害であるとはいえない。
・仮に著作権侵害となる部分があったとしても、著者(原告)の創作部分もある以上、二次的著作物としての著作権は発生する(=無断転載サイトに損害賠償を求めることは可能)。
・わいせつ性については、確かにそのような表現もあるが、損害賠償請求を認めることが公序良俗に違反するほどではない。

2.損害賠償額について

・サイトのPV数と同人誌の販売は、閲覧か入手か、無料か有料かでは大きく異なる。
 従って、PV数の1割をもとに計算した一審の損害賠償額(約220万円)が妥当。